歯科医S
歯科医S
今日一本抜歯した。
私はこの歯が、子供の頃から嫌いだった。
歯列不正で内側に倒れている。虫歯になって何度も治療したし、周りの歯にも迷惑をかける厄介者。そんな感じだった。
「今日抜いて貰えるのが嬉しくて。」
「えーそんな事言う患者さん初めてだ。」
麻酔をかけられて
口を開けているとビートルズの曲が
Come Togetherに変わった。
治療は、3曲。腕がいいもの。
抜歯は力仕事だと思う。
「折れた。」虫歯だから予想通り。
「ファ」麻酔が効いて返事が出来ない。
「頑張って。」と先生が言う。
心の中で、頑張るのは先生あなたです。
予想通り3曲だった。
すんなり治療が終わって嬉しい。
「痛み止めも抗生物質も要りません。」
「分かりました。今日お風呂はダメ。
明日、消毒に来てください。」
厚木に引っ越してきて知人に勧められ
もう30年近い。
子どもと母と夫も通ってきた。
母はぴったりの義歯を作ってもらいそれを
入れて96歳で旅立った。
美しい歯並びの総義歯。ちょっと憧れる。
良い歯科医の条件にSは当てはまる。
技術、人柄、インフォームドコンセント
保険内診療。
AIやInternet of Thingsの時代が来る。
先生頑張って!感謝のエール
the end
これは、当院の患者さんの短編小説でした。ここに出てくる「S」は自分のことでしょうか?だとしたら誉めすぎです。
2021年06月15日 19:25